補助金・助成金とまとめて語られることが多い二つのお金ですが、実は違う制度であることをご存じでしょうか?
補助金と助成金の相違点
厳密にはいろいろありますが、相違点をざっくり申し上げますと、
補助金は、
① 事業を支援するためのお金であり、設備投資やシステム投資などが対象
② 経済産業省の管轄
③ 原資は税金
④ 金額が数十万~数千万以上と大きい(億単位のものも)
⑤ 選抜審査があり、要件を満たしても受給できるとは限らない
⑥ 申請受付は年に1回~数回
⑦ 申請支援はだれに依頼してもよい
(一般的には中小企業診断士や行政書士の得意領域とされる)
助成金は、
① 人を支援するためのお金であり、雇用・教育・労働環境の改善などが対象
② 厚生労働省の管轄
③ 原資は労働保険料(雇用保険料)
④ 金額が数万円~数百万円以下と小さい
⑤ 要件を満たせば受給できる
⑥ 申請受付は通年、ただし予算がなくなると終了
⑦ 申請を支援(代行)依頼するなら社会保険労務士
(社会保険労務士しか助成金の申請代行はできない)
という区分になります。
#特徴は補助金だが、名称が「…助成金」という場合や、その逆の場合もありますので、ご注意ください。
さらに注意すべき相違点は、「雇用」が要件とされるかどうかです。
補助金は、従業員を雇用していなくても申請可能
つまり、一人社長の申請もOKです。
一方、助成金は、従業員を一人以上雇用していなければ申請できません。
一人社長の申請はNGということです。
この違いは、補助金が基本的に「事業」をサポートするものであるのに対し、助成金が「人(従業員)」をサポートするものであることに起因しています。
助成金の原資は雇用保険料なので、人を雇っておらず、雇用保険に加入していない事業者はそもそも支給対象にならない、ということですね。
補助金と助成金の共通点
一方、共通点は以下の通りです。
A:中小企業、個人事業主が対象
B:基本的に返済の必要がない
C:事業期間外に発注や支出をした経費は対象にならない
D:後払いで支給される
(まずは費用を支払う→補助金・助成金はその後から支給という流れ)
「C:事業期間外に発注や支出をした経費は対象にならない」というのは、
交付決定や計画認定の「前」に実行したものは受給対象にならない
という意味です。
#補助金も助成金もざっくりいうと、計画の申請→審査→交付決定・計画認定→計画の実行(事業実施)→実施報告→受給という流れで進みます。
たとえば補助金で設備Aを導入し、新商品を開発する計画の場合、交付決定が出る前にAを業者に発注してしまったとなると…
残念ながら、このケースでは設備Aは補助金の対象から外れてしまいます。
補助金における設備発注だけでなく、助成金における正社員への雇用転換や教育なども、計画認定前のものは基本的に対象から除外されます。
「D:後払いで支給される」で留意すべきは、
申請から受給までの期間が長いという点です。
補助金・助成金ともに後払いであり、申請から実際にお金を受け取るまでの期間は短くて半年、長いものは1~2年もかかります。
よって、計画の実行(設備導入、正社員の雇用など)に必要な資金は、事前に事業者が準備しておく必要があります。
交付決定や計画認定ですぐに受給できると思っている方は、くれぐれもご注意ください。
補助金・助成金は政策の実現手段のひとつ
最後に、補助金と助成金の共通点で、もう一つ大事なことをお伝えします。
それは、
補助金や助成金は国や自治体の政策を実現するためのものである
ということです。
国や自治体は、政策に沿って、事業者さんに「こういうことに取り組んでほしい」という要望を持っています。
たとえば、
a:コロナや物価高騰に負けずに、新事業に取り組んで欲しい
b:(自社にとっての)革新的な商品やサービス作りに挑戦してほしい
c:正社員を雇用してほしい
d:教育や研修を実施し、従業員のスキルを向上させてほしい
e:従業員の賃金を上げてほしい など…
つまり、これらの要望をかなえてもらうための誘導策として補助金や助成金があるのです。
具体的に見てみましょう。
実は、上記a~eの要望はそれぞれ以下の補助金・助成金に結びついています。
a:事業再構築補助金
b:ものづくり補助金
c:キャリアアップ助成金
d:人材開発支援助成金
なお、eの賃上げは、様々な補助金・助成金での補助(助成)率や上限額のアップの要件になっており、国が最も重視している政策といえます。
このように補助金・助成金にはその前提となる政策や要望があることを覚えておくと、理解しやすいと思います。